2024年2月28日 インプラント
インプラント治療は医療費控除の対象です。そのため、1月1日から12月31日までに支払った治療費用の合計額が一定の条件を満たす場合、確定申告によって一部が還付されます。
なお、医療費控除とは、一定の条件を満たす医療費を所得から控除できる制度のことです。医療費控除を受ける際には、治療にかかった領収書や明細書が必要になります。2025年現在は電子明細や電子領収書も増えていますが、紛失や保存方法に注意しながら適切に保管・管理しましょう。
医療費控除が適用される条件は下記のとおりです。
この「生計を一にする親族」には、6親等以内の血族や3親等以内の姻族なども含まれます(民法第725条)。したがって、ご自身以外でも該当範囲内の家族の医療費も合算して控除が受けられます。
医療費控除の対象は、「治療を目的として支払った費用」です。インプラント本体の費用だけでなく、以下のような関連治療費や付随する費用も広く対象になります。
一方、下記のようなものは医療費控除の対象外となるケースが多いためご注意ください。
治療目的かどうかが判断のポイントになります。実費で支払った交通費・診断書費・薬代などは領収書や記録を残しておくようにしましょう。
ローン(デンタルローン)やクレジットカードで支払った場合でも、医療費控除の対象になります。その際の支払時期の扱いは以下のとおりです。
インプラント治療における医療費控除の対象額は、下記の計算式で求められます。
1年間にかかった医療費の総額-保険金などの補填金-10万円
補填金とは、健康保険や生命保険から支給されるものです。また、年収が200万円以下の場合は下記の計算式が適用されます。
1年間にかかった医療費の総額-保険金などの補填金-総所得の5%
確定申告を行っても、医療費控除の対象額がすべてが還付されるわけではありません。還付金の割合(所得税率)は年収によって異なり、5〜45%となっています。
ここでは、年収別の還付金の目安を見てみましょう。なお、医療費の総額は50万円、補填金は0円と仮定し計算式に当てはめていきます。
医療費控除額=50万円ー0円ー10万円ー40万円
還付金=40万円✕5%=2万円
医療費控除額=50万円ー0円ー10万円ー40万円
還付金=40万円✕10%=4万円
医療費控除額=50万円ー0円ー10万円ー40万円
還付金=40万円✕30%=8万円
医療費控除額=50万円ー0円ー10万円ー40万円
還付金=40万円✕23%=9.2万円
医療費控除額=50万円ー0円ー10万円ー40万円
還付金=40万円✕33%=13.2万円
インプラントの医療費控除を申請するには、確定申告の手続きが必要です。必要書類を準備し、期間内に確定申告を行いましょう。
確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
確定申告書はA・Bの2種類があり、会社員の方はAを、個人事業主の方はBを準備します。国税庁のホームページでダウンロードできるほか、最寄りの税務署や役所でも入手できます。
源泉徴収票は会社から発行されるので、紛失しないよう大切に保管してください。
医療費控除の明細書は、領収書などに記載されている金額を入力し作成を進めます。こちらも国税庁のホームページに作成コーナーが設けられています。
医療費通知は、加入している健康保険組合から届きます。被保険者などの氏名・治療年月日や施設名・医療費額など、必要な情報が記載されているか必ず確認しましょう。
確定申告は期限が設けられています。原則として2月16日から3月15日までに手続きを済ませなければいけません。(日付が土曜・日曜・祝日だった場合は翌平日に繰り越されます。)
インターネット(e-Tax)でも申告できますが、手続きに関する質問や不安がある場合は税務署などで相談しながら進めるとよいでしょう。
インプラントの医療費控除は、年末調整では対応してもらえません。年末調整で対象になるものは生命保険料控除や社会保険料控除、地震保険料控除などです。
e-Tax(イータックス)とは、国税電子申告・納税システムのことで、インターネット経由で所得税や消費税、贈与税などの税金に関する申告を行える仕組みです。マイナンバーカードを利用してログイン・電子署名を行うことで、紙の書類に比べて提出手続きが大幅に簡略化され、受付から還付までのスピードが早まるメリットがあります。
スマホ申告は、スマートフォン専用に最適化された確定申告手続きの総称で、国税庁が提供する「スマホ申告アプリ」やウェブブラウザから簡単に医療費控除・所得税の確定申告ができる仕組みです。マイナンバーカードをスマホのNFC機能で読み取り、e-Taxのシステムを利用してオンライン申告できます。
改正電子帳簿保存法が2022年に施行され、電子明細や電子領収書での管理も一般的になっています。
ただし、以下の点に注意しましょう。
クラウドストレージや会計ソフトと連携して保管する場合も、国税庁の要件を満たしているかを必ず確認しましょう。
インプラントの医療費控除に関して、よくある質問と回答をまとめました。
A. 無職や主婦の方でも受けられます。以下のいずれかに該当する場合が多いです。
A. なります。ただし、電子帳簿保存法に則った形でデータを改ざん防止しつつ保管する必要があります。医療機関から電子データで発行された領収書は、そのまま保存システムに取り込むと便利です。
A. マイナンバーカードがなくても受けられます。ただし、マイナンバーカードがあると、e-Taxでのオンライン申請が簡単になり、還付金も早く振り込まれるといったメリットがあります。
A. 治療目的で定期検診や治療継続中であれば、基本的に対象になります。単なる美容目的やクリーニングのみの費用は対象外と判断されることがあります。
担当医から「治療の一環」として証明される場合は、領収書を保管しておきましょう。
A. 併用可能です。ただし、医療費控除をするとふるさと納税のワンストップ特例が使えなくなり、確定申告が必要になります。また、医療費控除額が大きくなるほど、ふるさと納税の控除限度額に影響が出る場合があります。
A. 2025年現在、多くの税務署や自治体がAIチャットボットによる相談対応を行っています。国税庁のオンラインチャットサポートやビデオ通話相談なども導入されているため、電話や直接出向く手間を省けるケースが増えています。
「確実に還付金を受け取るためには、期限内の申告と必要書類の不備がないことが大前提」です。以下のポイントをチェックしつつ、スムーズに医療費控除を行いましょう。
インプラント治療でかかった費用について、医療費控除の還付金を受け取るには確定申告を行う必要があります。
確定申告は期限が決まっているので、その間に申告を済ませなければいけません。
申告に関して不明点などがある場合は、税務署で相談しながら進めれば安心です。確実に還付金を受け取るためにも、抜け漏れや必要書類の不備がないように注意しましょう。
著者:金﨑伸幸
【歯科臨床と教育にすべてをささげる歯科医】
患者様に心から喜んでいただける「良い治療」を追求したい。
日本最先端インプラント開発会議コアメンバー就任 / 先端歯科医療研究会 SEDIT代表に就任 / 九州歯科大学審美歯科非常勤講師に就任 / 愛媛大学医学部非常勤講師に就任 / Doctorbook academy「真夏のスキルアップセミナー3Days歯周病Xリグロス」応用編講師 /