インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込むため、十分な骨の量と厚みが必要です。しかし、歯周病や抜歯後の骨吸収などにより骨が不足している場合があります。そのようなケースで行われるのが「骨造成」です。本記事では、インプラント治療における骨造成の仕組みや痛み、成功率、必要になるケースについて詳しく解説します。
骨造成とはどのような手術?
骨造成とは、インプラントを安全に埋入するために不足している顎の骨を増やす治療(再生手術)のことです。歯を失った部分では、時間の経過とともに骨が痩せてしまうことがあり、そのままではインプラントを支える十分な骨量が確保できない場合があります。
そのため、人工骨や自分の骨(自家骨)などを使用して骨を再生させ、インプラントがしっかり固定できる状態を作ります。骨造成は歯科インプラント治療の中でも専門性の高い手術の一つであり、患者様の骨の状態や症例によって方法が異なります。
代表的な骨造成の方法には、次のようなものがあります。
- GBR(骨再生誘導法)
- サイナスリフト(上顎の骨を増やす方法)
- ソケットリフト
- ブロック骨移植
特に上顎の奥歯では、上顎洞という空洞が近く骨の高さが不足しやすいため、サイナスリフトなどの骨造成手術が必要になるケースがあります。
骨造成を行うことで、これまでインプラント治療が難しかった症例でも治療が可能になる場合があります。
骨造成手術の痛みはどの程度?
骨造成手術は外科処置のため、痛みや腫れを心配される患者様も多くいます。しかし実際の手術は局所麻酔を使用するため、処置中に強い痛みを感じることはほとんどありません。
術後は麻酔が切れた後に軽い痛みや腫れが出ることがありますが、多くの場合は数日〜1週間ほどで落ち着きます。痛み止めや抗生物質が処方されるため、適切に服用することで症状を抑えることができます。
また、骨造成の種類や手術範囲によっても症状の程度は異なります。サイナスリフトなど広い範囲の骨造成では、腫れが数日続く場合がありますが、多くの場合は時間とともに改善します。
術後は強いうがいや激しい運動を避け、歯科医師の指示に従って安静に過ごすことが大切です。
骨造成の成功率について
骨造成はインプラント治療の成功率を高めるために行われる手術ですが、成功率は100%ではありません。患者様の骨の状態や全身の健康状態、生活習慣などさまざまな要因によって結果が左右されることがあります。
一般的には、適切な診断と手術計画のもとで行われれば高い成功率が期待できるとされています。ただし、喫煙、重度の歯周病、糖尿病などがある場合は骨の再生がうまく進まないこともあります。
そのため、手術前にはCT検査などで骨の状態を詳しく確認し、リスクを説明したうえで治療計画が立てられます。また、術後のセルフケアや定期メンテナンスも成功率に大きく影響します。 歯科医師と十分に相談し、自分の症例に合った治療方法を選ぶことが重要です。
インプラント治療で骨造成が必要なケース
インプラント治療では、顎の骨の量や厚みが十分にあることが重要です。しかし、さまざまな理由によって骨が不足している場合、骨造成が必要になることがあります。
代表的なケースとしては、次のようなものがあります。
まず、歯を失ってから長期間が経過している場合です。歯が抜けた部分の骨は刺激がなくなるため徐々に吸収され、骨量が減少してしまいます。この状態ではインプラントを安定して埋入することが難しくなります。
次に、歯周病が進行していた場合です。歯周病は歯を支える骨を溶かす病気のため、重度の歯周病があった部位では骨が大きく失われていることがあります。
また、上顎の奥歯では骨の高さが不足しているケースが多く見られます。上顎洞という空洞が近くにあるため、インプラントを埋め込むための十分な骨の高さが確保できない場合があり、この場合にはサイナスリフトなどの骨造成手術が行われます。
さらに、抜歯後すぐにインプラントを入れられない症例や、外傷などで骨が欠損している症例でも骨造成が必要になることがあります。
このように骨造成は、骨量が不足している患者様でもインプラント治療を可能にする重要な治療法といえます。
インプラント治療で骨造成を行うメリット
骨造成を行うことで、インプラント治療の安全性や成功率を高めることができます。骨量が不足している状態で無理にインプラントを埋入すると、安定性が低下しトラブルにつながる可能性があります。
ここでは、骨造成を行う主なメリットについて解説します。
①治療時のリスクを軽減できる
骨造成によってインプラントを支える骨の量を十分に確保することで、治療時のリスクを軽減することができます。
骨が不足している状態でインプラントを埋め込むと、インプラントが安定しなかったり、周囲の骨に過度な負担がかかることがあります。骨造成によって土台となる骨を再生することで、より安全な治療が可能になります。
また、骨の厚みを確保することで、インプラント周囲炎などのトラブルを予防する効果も期待できます。
②インプラントの接合が安定する
インプラントは顎の骨と結合することで固定されます。この結合は「オッセオインテグレーション」と呼ばれ、インプラント治療の成功において非常に重要な要素です。
骨造成によって骨量が十分に確保されると、インプラントと骨の結合が安定しやすくなります。その結果、インプラントが長期間にわたって機能する可能性が高まります。
骨の量や質が不足している場合に比べて、噛む力に対する耐久性も向上します。
③審美性がよくなる
骨造成は見た目の改善にもつながります。特に前歯のインプラントでは、骨や歯茎のボリュームが不足していると歯茎が下がったり、歯の形が不自然に見えたりすることがあります。
骨造成によって骨の厚みを補うことで、歯茎のラインを自然な形に整えることができます。これにより、インプラント治療後の見た目の美しさを向上させることが可能になります。
インプラント治療で骨造成を行うデメリット
骨造成はインプラント治療の可能性を広げる有効な治療法ですが、外科手術である以上いくつかのデメリットや注意点もあります。事前にメリットとリスクの両方を理解しておくことが大切です。
①術後の痛みや腫れが生じる
骨造成は歯肉を切開して骨を再生させる外科手術のため、術後に痛みや腫れが生じることがあります。
多くの場合、痛みは数日程度で落ち着き、処方される痛み止めによってコントロールできます。また腫れは手術の種類や範囲によって異なりますが、一般的には数日〜1週間ほどで徐々に改善していきます。
特にサイナスリフトなど上顎の骨造成では、頬のあたりが腫れることもあります。術後は安静を保ち、歯科医師の指示に従って適切なケアを行うことが重要です。
②治療期間が長くなる
骨造成を行う場合、骨が再生するまでの時間が必要になるため、インプラント治療全体の期間が長くなることがあります。
骨の再生には通常数か月程度の期間が必要とされ、その間は骨と移植材料がしっかり結合するのを待ちます。その後にインプラントを埋入するため、骨造成を行わない場合と比べると治療期間が長くなる傾向があります。
ただし、骨造成とインプラント埋入を同時に行えるケースもあり、症例によって治療計画は異なります。
③体質によっては骨造成を受けられない
患者様の体質や健康状態によっては、骨造成手術が難しい場合もあります。
例えば、重度の糖尿病や免疫疾患がある場合、骨の再生がうまく進まない可能性があります。また喫煙習慣がある場合は血流が悪くなり、骨の再生や傷の治癒に悪影響を与えることがあります。
そのため、手術前には全身状態の確認や詳しい検査を行い、安全に手術ができるかどうかを慎重に判断します。
骨造成の流れ
骨造成は、顎の骨の状態や治療計画に応じて方法が変わりますが、一般的には次のような流れで行われます。
①自家骨を採取する
骨造成では、自分の骨(自家骨)を使用する場合があります。必要に応じて、顎の別の部分などから少量の骨を採取します。
自家骨は患者様自身の組織のため、生体との適合性が高く骨再生が起こりやすいという特徴があります。
②インプラントを埋め込む
症例によっては、骨造成と同時にインプラントを埋入することがあります。骨の量がある程度確保できる場合には、この方法が選択されることがあります。
一方で骨量が大きく不足している場合には、先に骨造成を行い、骨の再生を待ってからインプラントを埋入するケースもあります。
③必要に応じて補填材を詰める
不足している骨の部分には、自家骨や人工骨などの補填材を入れて骨の再生を促します。
補填材は骨の土台となり、時間の経過とともに新しい骨へと置き換わっていきます。症例によっては複数の材料を組み合わせて使用することもあります。
④メンブレンを被せる
骨造成では、補填材の上に「メンブレン」と呼ばれる特殊な膜を被せることがあります。
この膜は、骨の再生を邪魔する軟組織の侵入を防ぎ、骨が再生するスペースを確保する役割があります。GBR(骨再生誘導法)ではこのメンブレンが重要な役割を果たします。
⑤骨の再生を待つ
手術後は、骨が再生して安定するまで一定期間待つ必要があります。一般的には数か月程度で骨が再生し、インプラントを支えられる状態になります。
この期間中は、定期的に歯科医院で経過観察を行い、骨の状態を確認します。
⑥人工歯を取り付ける
骨が十分に再生し、インプラントと骨がしっかり結合した後、最終的に人工歯(上部構造)を装着します。
これにより、見た目と機能の両方を回復することができます。治療後はインプラントを長く使い続けるために、定期的なメンテナンスと適切なセルフケアが重要になります。
まとめ
骨造成は、顎の骨が不足している場合でもインプラント治療を可能にするための重要な治療法です。骨の再生によってインプラントの安定性が高まり、長期的な成功率の向上にもつながります。
一方で、外科手術であるため痛みや腫れが生じる可能性があり、骨の再生を待つ期間が必要になるなどのデメリットもあります。治療を受ける際には、メリットとリスクの両方を理解し、歯科医師と十分に相談することが大切です。
愛媛県松山市のカナザキ歯科では、CTによる精密診断のもと、骨量が不足している症例にも対応したインプラント治療を行っています。骨造成が必要と診断された場合でも、患者様さま一人ひとりの口腔状態に合わせた治療計画をご提案しています。
インプラント治療や骨造成について不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。
監修:カナザキ歯科 院長 金﨑伸幸
【経歴】| 1990年 | 九州歯科大学卒業「Award of Dentsply」受賞 |
| 1994年 | 九州歯科大学保存修復学 大学院博士課程修了(歯学博士) |
| 北九州市 野田歯科医院 勤務 | |
| 九州歯科大学 非常勤講師 兼務 | |
| 1997年 | 松山市 田窪歯科医院 勤務 |
| 1999年 | カナザキ歯科 開業 |
| 2001年 | 愛媛県立歯科技術専門学校 歯科技工士科講師 |
| 愛媛県保険医協会 理事 就任 | |
| 2004年 | 医療法人 仁和会 設立 |
| 理事長 就任 | |
| 2006年 | 国際矯正歯科アカデミー |
| 矯正歯科認定医 | |
| 2007年 | 仁和会インプラントセンター 設立 |
| SEDIT(審美とインプラントのスタディグループ)設立 | |
| 日本咬合育成研究会 | |
| 筋機能訓練歯科医院 修了証 | |
| 日本臨床歯周病学会 認定医 | |
| 厚労省認定 臨床研修指導医 | |
| 2010年 | 河原医療大学校 歯科技工士科 講師に任ぜられる |
| ICOI国際インプラント学会認定医 合格 | |
| 2011年 | 日本歯周病学会 専門医 |
| 日本顎咬合学会 認定医 | |
| 2012年 | インプラントSD正式認定講師に任ぜられる |
| 2013年 | プラトン社ELインプラント正式認定講師に任ぜられる |
| 厚生労働省より管理型歯科医師臨床研修施設の指定をうける | |
| 2014年 | ノーベルバイオケア社インプラント公認インストラクターに任ぜられる |
| 2016年 | 日本口腔インプラント学会 |
| インプラント専門医 | |
| 2017年 | 九州歯科大学 保存修復・審美歯科 |
| 非常勤講師 | |
| 2019年 | 九州歯科大学1保存大学院 |
| セミナー講師(歯周外科・補綴) | |
| 日本総合歯科学会 委員 | |
| 2020年 | 愛媛大学医学部 非常勤講師 |
| 2022年 | 日本歯科教育学会プログラム |
| 責任者講習会タスクフォース | |
| 2023年 | 日本歯周病学会 指導医 |